2007-06-09
テリー・ケイ 新潮文庫(1998刊) ¥552(税別)
アメリカで1990年に刊行され
『マディソン郡の橋』などとABBY賞の候補ともなったことのある作品です。1993年にはTVドラマ化され、
日本でも1995年と1997年にNHKで放映されたことがあるそうです。
昨年あたりに突然ブレイクしてミリオンセラーを記録しています。
日本での映画化も話題になっています。
ストーリーは、妻を突然失った81才の老人が、
まるで妻と入れ替わるかのように不思議な”白い犬”と出会い、
その犬とともに頑固で大地に根ざした生きかたを全うし、
ついにはガンのため従容として死を迎えるまでを描いています。
この”白い犬”は主人公のサム以外には姿を見せないのです。
サムは苗木職人としては有名な人物です。
が、名声には無頓着に、妻と子どもたちに囲まれ実直に生きてきた。
そんな彼に神が与えた犬に在らざる者。
それが”白い犬”なのだったのかもしれません。
サムが倒れ危険なときに姿をさらすまで、
”白い犬”は誰も見ることができなかったのです。
だけれど、サムには寄り沿うように”白い犬”がいた。
90ページ当たりで、
この小説のタイトルともなった象徴的なシーンが描かれているが、
感動的である。
それ以外にもサムの目に映る”白い犬”は草原を跳ぶように駆け、
傍らでじっと見つめていたりと、
過去の追想を交えながら幻想的で美しい情景が続く。
”白い犬”との生活は、彼がガンに冒され、
家族の介護を受けるまで続く。その最後は…
作者が最後に描いたシーンは、
あなたも人生の最後に”白い犬”と出会えますか?
ふさわしい生き方をしていますか?
との問いかけのようである。
セ記事を書く
セコメントをする