2007-06-09
ベルンハルト・シュリンク著
新潮社 ¥1800 2000年刊(原著は1995発表)
20世紀最大の事件は
第二時世界大戦であったことは誰もが認めるところではないだろうか。
戦争により多くの国で戦闘の結果人命が奪われたこともだが、
派生した事件の数々が未だに暗い影を落としつづけている点においても。
曰く原爆症の問題。在日外国人の問題など、
決着が計られたといいながらもひきづったままの問題は
わが国でも見受けられる。
このベストセラー小説もまた
第二次世界大戦の影が重くのしかかっているのだ。
原著は1995年にドイツで刊行されている。
「ブリキの太鼓」以来の問題作だとされ全世界で読まれている。
そして、その評価は嘘ではなかった。
読後に覚える感慨は複雑であり、受ける感動も複雑なのだ。
特にホロ・コーストについて
ドイツ国民が抱えた問題は単純でなかったことを物語りもしている。
病がちの15歳の少年が、
ふとした弾みで母親ほどの年齢の女性に恋をする。物語はそうして始まる。
色彩鮮やかに語られる恋と、恋する女性のいる風景は、
目くるめく快感を伴って繰り広げられる。
やがて恋した女性の奇妙な習慣が明らかになっていく。
愛を交わしたあと朗読をせがむのだった。
色鮮やかな青春の頁に忍び寄る奇妙な違和感。突然の別離。
痕跡まで消し去り消えてしまった恋人。少年はやがて忘れていく。
司法修習生として法律の道を目指す青年となった彼の前に、
恋人は姿を再びあらわす。戦争犯罪人として法廷に立ち。
自らの自尊心のためあらゆるものと戦いつづけながら、
総ての責任を負わされることを選択しながら…。
少年は、戦犯として服役することとなったかつての恋人に、
朗読をテープにして送り始めるのだった。
やがて年月が過ぎ出所の日が近づく…
今世紀を締めるにふさわしい作品です。ぜひ読んでください
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