きみとぼくの壊れた世界
2008-06-30


西尾維新   講談社   880円

「不気味で素朴な囲われた世界」      
[URL]
と同じシリーズとされる作品。こちらが先に出版された。

一作品だけで判断するのもどうかと思い、読んでみたが、
やはり好きになれない作風である。
古臭いといわれようが、過去の遺物といわれようが、
もっとまともな人間が登場人物に欲しい。
出てくる登場人物がすべてどこかいかれた感じというのは、
読んでいて安定感がなく、
いくら現実の閉塞感なりから跳ぼうとしているのだとしても、
やってはいけない禁じ手のような気がする。

大体ミステリに分類されているのだが、
謎解きのし様がないミステリでしかなく、
殺人の動機も薄弱なものでしかないのは馴染めない。
もちろん、こういう世界が好きな人がいるのは理解もするが、
個人的には読んだ後に不条理すら感じないので空しく思う。
読むのが時間の無駄といった印象を抱いてしまう。
年寄りが手を出すものではないだろう。

「不気味で素朴な囲われた世界」 が肉親に対して、
些細な理由で殺意を抱き、
人をコントロールして殺害させるという物語だったのに対して、
「きみとぼくの壊れた世界」は、
禁断の一線を越えようとしている一歳違いの兄妹が軸となる。
兄妹それぞれに言い寄る同級生がいるが、
兄妹はお互いしか見えていず、妹に言い寄る男には兄が制裁を加え、
兄に言い寄る女性がいれば妹の嫉妬を考慮し、関係を絶つ。

そういう兄には友人がいて、
その友人たちが関係する中で殺人事件が起きる。
犯人は誰か。
第2作でも登場する病院坂黒猫が探偵役として、
容疑者を6人に絞込み、犯人探しをする。
兄・妹・剣道部部長・殺害された当人・兄を思う女性・黒猫。
犯人はその6人の中にいる。

意外でも、なんでもない結論に行き着くのだが、
動機は希薄、回答にも齟齬がある。
本格ミステリとするには無理があるように思う。

狂気の存在を肯定したまま、物語を終えてしまうのが不気味。
[読書]

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