どうぶつと話したい ボニーとドーンの奇跡の牧場物語
2009-08-14


ボニー・ジョーンズ・レイノルズ&ドーン・E・ヘイマン   
                  ランダムハウス講談社   1800円

 某愛護団体を自称する人たちが、この本の著者たちのようなインタースピーシーズ・コミュニケーションの名手からいろいろな犬たちの声を教えていただいたと報告している。まあ、それが他愛の無い与太話に終始するのなら害は無いが、自分たちが犬たちから信頼されているんだよというお墨付きのために使われると辟易してしまう。とんでもない勘違いをしている人たちは洋の東西を問わず存在する。さしずめ紹介の本の著者もそうした人たちということになろう。

 この本は2005年にアメリカで出版され2006年に日本で発売された。牧場、それもシェルターとしての牧場運営のノウハウという部分以外は、御伽噺とぼくは思っている。テレパシーで動物と会話したとか、前世を記憶する動物や、死んだ動物の魂が記憶を持って転生してくるなど、そういう以外には、ほか無い。

 ボニーはモデルやタレントをしていた経験がある。ハリウッドで女優をしていたということも書いている。実家はニューヨークの来た山間部で牧場を経営していた。1971年に両親が牧場経営から引退し牧場の納屋一棟を譲り受けている。2度の離婚の後、両親の現状から故郷に帰り暮らすうち、後の共同経営者ドーンと出会う。1984年から納屋の改造に着手し、終了と伴に馬を購入しスプリングファームの再建を行う。再建後のスプリングファームは、幾度かの資金難に陥るがその都度支援を得、人間社会から見捨てられ、殺されそうになった病を持つ動物や、老いた動物を引き取る非営利目的の牧場となる。

 上記に書いたようなことをさまざまな人とのかかわりを含めて書かれたのが本書である。といっても動物保護の話題が中心となるのではない。この本はスピリチュアルな体験が中心となっている。特に動物と会話できるというところは、日本のアニマル・コミュニケーターたちに影響を与えているのではないかと思われる。

 確かに動物と暮らしている人たちは、自分の元にいる動物と心を通じ合わせたいという欲求を持っている。動物と会話ができるはずが無いという信念を持っている人だって、潜在的には動物と言葉が交わせたらと思っている。だからこそ犬と会話ができますというおもちゃが出たら買ってしまう人が多い。

 ぼくも犬飼だが、そういう願望の強い人が「うちの○○ちゃんは××というのよ。」なんていっているのを聞くとあほかと思ってしまう。それでもそのぼくにしたところで家では犬たち相手に大真面目にいろいろとしゃべっている。お察しの通り僕も犬たちと会話してみたいと内心思っているのだ。だからアニマルコミュニケーターが本当にいるのなら、僕自身がなりたいと思っているところだ。

 ただ、ボニーとドーンのようにテレパシーで会話するとか、馬が前世はシャーマンだったとか、医者だったとか話しかけてきたなどと大真面目に主張されると、退かされてしまう。
 アニマルコミュニケーターになりたいとするならば、声だけで40種(群によって方言もあるそうだ)以上とも言われる犬の吠え方・鳴き声を良く分析し、さらにカーミングシグナルの意味をしっかりと学習すればよいのだろう。ボディランゲージを取り違えることなく理解できるならば、もはやそれでひとつの能力といえる。何もテレパシーなど必要が無い。そもそもテレパシーで通信できるという例は小説の中ならともかく、現実社会ではお目にかかれない。まして前世においておや。こういうものを持ち出されてしまうと胡散臭くて仕方ない。

 どうしてもそういう人がいると信じているなら、犬の心を読めるくらいだからあなたの心だって読めるはず。たいていそういう人は人間の心など読んでくれません。どのように物語を作ったって、動物がそれは違うなんて指摘してくれません。言いたい放題なんです。特に前世なんていう人がいたら御用心。御用心。

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