嶽神伝 血路
2019-04-13


長谷川卓  講談社文庫  820円

長谷川さんは100タイトルを超える著作を送り出す、
まぎれもない人気作家なのである。
時代小説を活躍の舞台に、
「北町奉行所捕り物控」だとかシリーズものも多数手がける。
なのに僕は、これまでただの一冊も、読んだことがない。
歴史・時代・伝奇小説も結構読んでいると思っているのに、
本当に初めてなのだ。

長谷川さんは1949年生まれで
1980年に群像新人文学賞を受賞し、
1981年には芥川賞の候補になっている。
その後時代・歴史小説に軸足を移し、2000年に本作を発表。

さて、この作品は理屈抜きに面白い。それでだけでいいと思うのだ。

時は武田が諏訪に侵攻しようとするころ。
謀略で芦田氏を内紛に導き、自陣営に取り込む。
内紛により弑逆される城主の嫡男・喜久丸は落ち延びようとするも
討手に囲まれ絶対絶命の窮地に音いる。
その危機を救ったのは、一人の男、
落としの七つと称される「七つ家」の市蔵という。
喜久丸は、山で生き抜く術を市蔵から学び、
仇討つ機をうかがうこととなる。

武田の野望は諏訪家を追い込む。
頼重の室に収まっていた晴信の妹は、兄の酷薄を知るため、
子・寅王を父・信人らがもとに逃すべく「七つ家」を頼る。
落とす「七つ屋の前に立ちはだかるのは武田の忍者「かまきり」。
「七つ家」と「かまきり」の激しい戦いがはじょまる。

話は横にそれるが、
65歳前後の男たちは忍者にあこがれた世代である。
幼少期には「伊賀の影丸」「カムイ電」といった漫画にはまり、
「忍者部隊・月光」なんていうドラマを見て育った。
(どう考えたって自衛隊のレンジャーとしか思えない)
長じては山田風太郎作品に魅せられたりしている世代なのだ。
だから「嶽神」シリーズには必ずはまるに違いない。

異能力を持つ「かまきり」たちに、山の者の知恵と技術で立ち向かい、
秘術を尽くしての各党が活写されていく。
これは本当にはまる。

元は「南陵七つ家秘録 七つの二つ」の題だったわけだが、
(改題し「血路 南陵七つ家秘録」再改題「嶽神伝 結露」)
七つ家の二つとは誰なのか、喜久丸の仇討はどうなるか、
一冊の中には医いているエピソードも満載。北条家の風魔も絡んでいる。

「嶽神」シリーズでは時間的に初めに位置する。
[読書]

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