2020-09-24
講談社文庫。副題は「上水流涼子の解明」。単行本は2017年刊。
「孤狼の血」「盤上の向日葵」で知られる著者の
それぞれ確率的、合理的、戦術的、心情的、心理的とされた
5編の短編からなる一冊で、そのタイトルに沿った解決が行われる。
この趣向と、美しい元弁護士・涼子を探偵に、
知略に優れた木山が助手役に据えられた二人のキャラが物語を彩る。
5つの作品を読み進めるうち、涼子と貴山の人物像がはっきりしていく。
涼子が弁護士資格をはく奪されたわけ、
貴山が涼子の助手を務めるわけが浮かぶ。
預言者を信じる経営者、悠々自適の引退生活で金遣いの荒くなる妻、
賭け将棋に興じるやくざ、孫を連れ去られた企業グループ会長、野球賭博でのトラブル、
解決に至る道筋はいろいろあれど痛快である。
事件解決に導くのがミステリの主流だが、
柚月さんのこの作品は事件に関わった人物の心情を解決することに向けられている。
こういう作品の趣向はめったにお目にかかれない。
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