翻弄
2022-04-06


上田秀人

長宗我部盛親と徳川秀忠。元親と家康という偉大な父の跡を継ぐ二人、
関ヶ原の役で別れる二人の姿を描く。
英才教育を家康から施される秀忠の鬱屈、
元親が期待した長男の落命により、成り行きで家督を継ぐこととなった盛親。
盛親は落胆した元親からろくな教えを得ず家臣の助言に振り回される。
そうして改易の憂き目を見ることになる。

大阪の役に向けて二人の鬱屈と願望が語られていく。
秀忠と盛親を対比していることで、後継者がどうなっていくのかは
本人に訪れるほんのちょっとの運の違いだと知らされる。

どちらがより恵まれているというのか。読後に余韻を残す。

上田秀人は「天守信長 裏・表」を読んだ記憶がある。
本能寺の変を、信長の策士策に溺れる無様を描いた点で
とても面白い体験をさせてもらった。

本作品では「天守信長」に見るような壮大な創作はないけれど、
やっぱり独自性の強い所に好感を持った。
滅びる長曾我部家と栄える徳川家を扱うことで、
新しい読み心地を大阪の役に見いだせる。
[読書]

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