2007-06-09
宮部みゆき著 東京創元社 1992刊 ¥620 文庫
宮部みゆきさんは、本当にうまい作家である。
1987年に文壇デビューを果たしてから現在までの活躍は
“日本ミステリ界の華”と呼ぶに相応しい。
宮部さんの作品は単にミステリに止まらず、
時代小説からSFまでと幅広い。
『火車』(山本周五郎賞1992)『蒲生邸殺人事件』(日本SF大賞1996)
『理由』(直木賞1998)など文学賞受賞暦を見ても多彩だ。
今、旬な宮部さんの長編デビュー作品が、
今回紹介する『パーフェクト・ブルー』なのだ。
初期の作品にして、この完成度。
ミステリとしての意外性はもちろんのこと、
社会問題を巧みに取り入れ、
いくつかの事件を絡めあいながら読者を引っ張るうまさには脱帽してしまう。
蓮見探偵事務所の調査員・加代子と引退警察犬マサは
諸岡進也を連れ戻すように依頼される。
進也を見つけ連れ帰る途中に
一人の高校野球のヒーローが殺害される現場に居合わせることとなった。
その殺害された少年は進也の兄だった。
そして、殺害犯人は、兄の少年野球仲間だった。
事件はそれで終わったかと思えたのだが…
製薬会社の新薬開発をめぐるスキャンダル、
商業化しすぎた高校野球界の問題などが絡み合い、
事件は意外な展開を見せる。
この予想外の結末をあなたは想像できないだろう。
物語は、元警察犬のマサの視点で書かれている。
マサが見る人物像がストーリーに更なる彩りを与えている。
宮部さんはデビュー長編での登場人物に愛着があったのか、
続編が書かれている。『心とろかすような』が、それである。
あわせて読んでみるといいのではないだろうか。
作家自身の成長からか、
ぐっと力が抜けた好篇でまとめられた連作短編集となっています。
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