2008-08-14
近藤史恵 文春文庫 571円
安楽椅子探偵物といってよい作品だ。
とあるファミレスでバイトする久理子は、
バイト先で一も同じ席にいる常連の老人に興味を持つ。
そういうバイトの日々の間に、
バイト仲間から犬を飼わないかと持ちかけられる。
以前より犬が欲しいと思っていたこともあり、
両親を説得して飼い始めることにしたのだが、
その犬は死んでしまったのだという。
がっかり死して公園でタバコを吸おうとしてみても、
うまく火が点かずてやさぐれているところに、
常連の老人から話しかけられた。
老人と話すうちに落ち着いていく。
もらうはずの犬が死んだから、犬のいる生活はできないと思っていたら、
母親が犬をもらってきた。
アンと名づけ可愛がっていたところ、公園で誤食し病院に行く羽目に、
そこで毒物中毒が最近多発していることを知る。
あんに苦しい思いをさせたものに怒りをもつ。
知り合いとなった常連の老人に公園で気づいたことがあればと依頼する。
そして、老人からある日一日付き合ってくれといわれ、
ブリーダー回りをすることになる。
そして事件は老人が解決する。
いや、楽しい。
この本は、ファミレスの常連、国枝老人を探偵役に据える連作短編集になっている。
さしずめくり子が語り部・ワトソン役。
ファミレスという世界を中心にして起きるちいさな事件を、
国枝老人が次々と解き明かしていくのだ。
この国枝老人というのが、また謎だらけなのである。
いつも独りで長時間同じ席でコーヒーいっぱいで粘る。
国枝老人を知る人によれば、少々ボケが廻ってきているという。
だが久理子と公園で会うときには頭脳明晰なのだ。
家を訪れてもひっそりとしていて、いるかいないかわからない。
どうやら何か秘密があるらしい。
本作品集には3つの短編が収められているが、
3つ目の作品で驚愕の事実が明かされる。
不意を討たれてしまいました。
国枝老人の印象の微妙な食い違いで伏線を張っていたから、
国枝老人の正体には驚かされなかったが、
その理由までは想像の枠外でした。
この作品集、お買い得です。
続編も出ているらしい。早く読まねば。
セ記事を書く
セコメントをする