早朝始発の殺風景
2022-04-18


青崎有吾

青崎有吾は1991年生まれというので30歳を少し回ったところとなる。
初めて読んだのは「体育館の殺人」で、これは鮎川哲也生を受賞している。
その探偵役を務めた裏染天馬が活躍するシリーズ以外は読んでいない。
作風的にはパズラーに属するのかなと思う。
似鳥鶏の私立高校シリーズや米澤穂信の古典部や小市民シリーズと
舞台や事件解決の過程などで通ずるところがあるが、
もう少し本格寄りな気がしている。

6-7年前に「図書館の殺人」読んだを読み、続編を出版の旅購入した。
以降、書店で新刊を見かけることがなく、続編を期待していた。
(一度他のシリーズを見かけたが趣味が合いそうになく見送った。)
新聞広告で本文庫の発刊を知り、気になったものの。
なかなか書店で実物を目にすることがなく、
この間やっと見つけて買ってきた。
裏染め天馬シリーズではなく独立した作品だ。

「裏染天馬シリーズ」同様に高校生が登場するのだが、
誰かが殺されるわけではなく
まあちょっとした不思議を解こうという日常の謎解きに属するものとなっている。

それにしても殺風景が女の子の苗字とは意表を突かれた。
変な名前というのなら「海野藻屑」なんて超ド級の命名もあるが、負けてない。
で、性格のきつさはまさしくなのであるが、
美少女かつハードボイルドにして、相当にツンデレで、参った。

連作短編集になっていて最初と最後(エピローグ)に殺風景がいる。
間の4作は、それぞれ描かれる人物は異なるが、
微妙に交錯する関係性が示されていて、
足りない関係の補足はエピローグで示される。

いい感じなさわやかな結末を、それぞれで示しつつ、
エピローグではちょっぴり不穏な復讐の遂行が示されているが、
殺風景のさりげないデレぶりが、恋の季節を予感させ終わる。

青春小説として秀逸です。
青崎有吾に望んだものとは乖離していますが。
そこを無視すれば良質な読み物でした。
[読書]

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