オタクと家電は使いよう ミヤタ電器店の事件簿
2022-04-20


田中静人

他人の心に疎い家電店長と、他人の事情に聡い店員が繰り広げる、
家電うんちくたっぷりの、人が死なないほっこりミステリ。

5つのエピソードからなっている。
笑わないけれどお客を笑顔にするため努力しているとする
電気店の求人広告に惹かれた森野美優嬢は、
笑うことができなくなった事情を抱えている。
なぜそうなっているのかはエピソードが進むたびに明らかになる。
なんでも対応する電気店店長は家電知識の豊富さで
客の悩みを解決しようとするが、他人の気持ちに気づけないため
些細な事実に気づけないところがある。
美優は、家電の知識はなくてミヤタの騙るうんちくと、
客の依頼内容と家電の働きとの微妙な目的の食い違いを感じ取り、
その違和感から隠された気持ちがあることに気づく。

元は笑えていた、笑わなくなった彼女だから見えるものが
心地よいものを読者に与える。

その他人の気持ちが見えないミヤタが、
美優の抱える問題を解決していく。

登場する人物はよい人ばかりで、甘いっちゃ甘い世界だけれど、
こういう物語は決して嫌いではない。

量販店との差別化を如何にするかという
町の小売店の悩みを題材にしている点でお仕事小説としても楽しめようが、
サービスの細分化で新たな仕事が発生している今、
ここに書くような戦略が有効なものか疑わしくなってきている。
伝説のような世界観が本当に続くか。
そうあってほしいとは思いつつも、やっぱり古い価値観になっているように思う。
[読書]

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