ねこのばば
2007-05-22


畑中恵   新潮社   476円

しゃばけ 」 「「ぬしさまへ」 」に続く「しゃばけ」シリーズの第3弾になる。

お馴染みの登場人物が繰り広げる
悲喜こもごもなお江戸の人情風景。
表題作ほか5短編が収録されている。

この作品集では、「茶巾たまご」のできばえがお気に入り。

体が弱くてすぐに調子が悪くなる若旦那が絶好調。
いつもは進まぬ食事も、なんとお変わりまでする始末。
大妖である手代、仁吉と佐吉もいぶかるばかり。
何より本人さえ不思議に感じる始末。
食事の中科からは基金の粒が出てくるとなっては、もはや不気味。
若旦那のみならず、長崎屋も絶好調。
やることなすこと大当たり。
若だんなの兄・松之助見合い相手の大村屋から、
金次という風采のない小物を引き取ったそのころからの幸運続き。< br>一方金次のいなくなった「おおむら屋」では、松之助の相手が殺害される事件が発生。
松之助や金次にも嫌疑がかかっているからと
若だんな、例によってあやかしたちの協力で真相を調査する。
調査の結果わかったことは、被害者の文箱がなくなっているということ。
その文箱の中身こそ下手人に至る道。
和歌か旦那とあやかしの活躍のおかげで事件は一件落着。
奉公人のわびしさが出ているよ。
ところで金次が長崎屋から立ち去った。
とたんに若だんなは寝込んでしまう。
実は金次は貧乏神。
なのにどうして若だんなに幸運かが訪れたのか。
さても大事に扱われては、貧乏神とて神のうち
大切にされては祟るわけには行かなかったということで。


「しゃばけ」シリーズは、人でないものが無邪気さを持ち、
起きる事件も欲に駆られているとは言え、
何かしらの善意が感じられるので、ほっとしますなあ。
[読書]

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